※本記事は、集中治療におけるTargeted Temperature Therapy(TTM)などによって生じるシバリングに対する評価・治療に関するものです。(菌血症などに伴う内科的なシバリングとは関係ありません)
Take home message
・TTMなどによってシバリングが生じた場合は、脳や全身の代謝亢進につながり予後悪化に関連する可能性があり、速やかに対応を行う
・シバリングの評価には、BSASを用いて行い、BSAS 0を目標として管理する
・シバリングの治療は、薬理学的・非薬理学的方法を侵襲の少ないものからStep upで使用する
総論
・シバリングは、低体温や体温のセットポイントが上昇している場合の発熱の際に体温を維持・上昇させるために生理的な反応としてみられる
・シバリングにより体温は上昇するため、二次性脳損傷を予防するために重要な治療である標的体温管理(TTM:targeted temperature management)の妨げになる
・適切にシバリングを管理できなければ、目標体温を達成することは困難になり、予後の悪化につながる可能性がある
・さらに、シバリングにより脳代謝が亢進し、頭蓋内圧(ICP)や脳酸素消費量が上昇する可能性がある
・シバリングにより体全体の代謝が亢進し、CO2産生も亢進し、CO2分圧やICP上昇につながる
・これらのことから、シバリングは急性脳損傷の患者において速やかに管理されるべき神経学的緊急事態と考えられるべきである
評価方法
Bedside Shivering Assessment Scale(BSAS)を1時間毎に記録して評価する
BSASが0より大きい場合は医師に報告する
Bedside Shivering Assessment Scale(BSAS):スコア 0を目標として管理
スコア | 説明 |
---|---|
0 | 咬筋、頸部、胸壁の触診で震えの所見がなく、心電図(ECG)を使用しても震えの電気生理学的証拠がない場合 |
1 | 心電図(ECG)を使用して震えの電気生理学的証拠があるが、臨床的証拠がない場合 |
2 | 震えが頸部 and/or 胸部に局在している場合 |
3 | 震えが上肢の粗大な動きを伴う場合(頸部と胸部に加えて) |
4 | 震えが体幹、上肢、下肢の粗大な動きを伴う場合 |
治療
Step 1 アセトアミノフェン、マグネシウム、非薬理学的治療の使用
- アセトアミノフェン 1000mg IV ボーラス→ 650-1000mg PO 6時間毎
追加で以下を検討
- マグネシウム 2-4 g(16-32 mEq) IV ボーラス → 必要に応じて0.5-2 g/h(4-16 mEq/h)で持続静注(目標3-4 mg/dLに維持、Mgレベルを6時間毎にチェック)
- 皮膚カウンターウォーミング(例: 43℃でベアハガー設定)
- (日本未承認:ブスピロン 30mg 8時間毎)
20分後にBSASがまだ0より大きい場合、ステップ2へ進む
Step 2 鎮痛薬の使用
- フェンタニル 25-100 μg IV ボーラス → 25 μg/hで持続静注
または、
- ペチジン 25-50mg IV ボーラス → 必要に応じて1時間毎に投与
(代謝産物が痙攣を誘発する可能性あり、腎障害患者には適さない)
その後、BSAS 0を維持するために追加で以下を検討
- デクスメデトミジン IV 0.2 μg/kg/hで持続静注
20分後にBSASがまだ0より大きい場合、ステップ3へ進む
Step 3 鎮静薬の使用(※挿管していない患者では挿管を行う)
- プロポフォール 20-40mg IV ボーラス → 30-120 mg/h(血圧が耐えられる場合)
または、
- ミダゾラム 3-5 mg IV ボーラス → 2-15 mg/h
20分後にBSASがまだ0より大きい場合、ステップ4へ進む
Step 4 筋弛緩薬の使用
- ロクロニウム 0.6-1.2 mg/kg IV ボーラス → 3-12 mg/hで持続静注
- (日本未承認:シサトラクリウム 0.1-0.2 mg/kg IV ボーラス → 2-10 μg/kg/分で持続静注)
※筋弛緩薬を使用する場合は、BSASスコア 0およびトレインオブフォー(TOF)で1-2つの反応を維持するために筋弛緩薬を必要最低限に減量する
参考文献
J Intensive Care. 2018:6:45.(PMID: 30094030)
up to date(2024/6参照)
コメント
コメント一覧 (1件)
シバリングのコントロールはなかなか難しいので、鎮静・鎮痛・筋弛緩とどんどん増やしていきがちですが、その分デメリットも大きいと思われるので、なるべく侵襲を少なくできるようにしたいです。