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アセトアミノフェン中毒

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アセトアミノフェン ≧150mg/kgを摂取した患者は中毒の高リスク患者となる

・高リスク患者では、摂取後なるべく早期(摂取8時間以内)にアセチルシステイン(NAC)を内服させる

・投与量は、アセチルシステインを初回140mg/kg、2回目以降は70mg/kgで4時間毎に計17回内服

摂取4時間以降にアセトアミノフェン血中濃度を測定し、ノモグラムのTreatment line以下ならNACの内服はなし or 中止

摂取後24時間以内にアセトアミノフェン血中濃度を再検し、同様にノモグラムのTreatment lineを下回るなら内服は中止

・他、胃洗浄・活性炭、透析、肝移植の適応にもなりうる

通常の用法用量では安全な薬とされているアセトアミノフェンですが、大量に摂取すると適切な処置を取らなければ致死的になることがあります。単体でも市販されていたり、総合感冒薬にも含まれているのでよく見られる中毒の1つです。

目次

臨床症状

第1相(30分〜4時間):無食欲、悪心・嘔吐、発汗(大量摂取で乳酸アシドーシス、昏睡に至る患者もいる)

第2相(24〜72時間):上記症状の緩和・持続、肝障害(ビリルビン、肝酵素)、右上腹部痛

第3相(3〜5日):黄疸、凝固障害、低血糖、肝性脳症、腎不全、心筋症

第4相(7〜8日):肝障害の正常化もしくは持続的悪化

アセトアミノフェン中毒の高リスク患者

以下のいずれかに該当する場合はNACの投与を行う

・≧150mg/kgのアセトアミノフェンの摂取

・ノモグラムのTreatment lineを超える場合

摂取時間不明、反復投与している場合

以下のいずれかに該当する場合はNACの投与を行う

・アセトアミノフェン血中濃度>10μg/mL

・AST/ALTが上昇している

患者要因としては、

低栄養、大酒家、慢性肝疾患などは肝障害の高リスクとなるため、アセトアミノフェンの血中濃度の閾値を下げることを推奨しているガイドラインもある

アセトアミノフェン血中濃度測定とノモグラム

・初回の血中濃度測定は摂取4時間以降に測定(血中濃度が安定しないため)

・血中濃度がノモグラムのTreatment lineを超えている場合はアセチルシステインの投与を開始

・摂取後24時間以内に血中濃度を再検し、Treatment lineを下回っていたらアセチルシステインの投与は中止(上回っていたら継続)

測定できない場合は、高リスクとしてアセチルシステインの投与を開始する(特に≧150mg/kg摂取している場合)

ノモグラム(JAMA Netw Open. 2023; 6: e2327739.)

治療

胃洗浄・活性炭の投与

内服から1時間以内であれば、他中毒と同様に検討する

※徐放製剤や吸収が遅延する薬剤と同時摂取した場合は1時間以降も有効な可能性あり

アセチルシステイン(NAC)の投与

経口で140 mg/kgの初回負荷量を投与 ➔ 70 mg/kgの維持量を4時間ごとに17回投与

アセトアミノフェン摂取後早期に(可能なら8時間以内、遅くとも24時間以内)NAC投与開始が望ましい

投与例)

50kgであれば「アセチルシステイン(あゆみ)」を

初回2本(40mL = 約7000mg)

2回目以降1本(20mL = 約3500mg) 内服されればよい

まずいで有名なアセチルシステインですが、味はしょっぱえぐい感じで匂いは強烈な硫黄臭がします。良く言えば天然温泉、悪く言えば腐った卵という感じです。ただでさえアセトアミノフェン中毒患者は悪心・嘔吐を自覚していることがあるため、そのまま内服させると嘔吐される可能性があります。フルーツジュースなどと一緒に内服させると緩和されるようです。

海外には静注製剤あり

(静脈内投与の初回負荷量は150 mg/kgで15~60分間で投与➔4時間で12.5 mg/kg/時を投与➔最終的に16時間で6.25 mg/kg/時を投与)

※腎機能や肝機能の障害、または透析に対する投与量の調整は必要なし

血液濾過透析

アセトアミノフェン濃度≧900 μg/mL

アセトアミノフェン中毒によるアシドーシスや意識障害がある場合

➔ 血液透析が推奨される

④肝移植チームと相談

相談を検討すべきなのは、NACによる治療にも関わらず

・AST/ALT上昇や凝固異常が進行するとき

・肝性脳症や多臓器不全が出現するとき

King’s college criteria

いずれかを満たす場合に肝移植を検討する

・動脈血液ガス pH < 7.3

・INR>100秒 + Cre>3.4mg/dL + 肝性脳症 Ⅲ-Ⅳ度

日本で肝移植が施行できることは稀なので、血漿交換などの保存加療も検討する

治療アルゴリズム(JAMA Netw Open. 2023; 6: e2327739.)

特殊な状況

抗コリン薬またはオピオイド作動薬との同時摂取

アセトアミノフェンが抗コリン薬またはオピオイド作動薬と同時に摂取される場合、アセトアミノフェンの吸収が遅延または延長する可能性が懸念される。管理は他のアセトアミノフェン製品と同様。

体重100kgを超える患者

体重100kgを超える患者の管理は、他のアセトアミノフェン製品の摂取と同様です。ただし、アセチルシステインの投与量の計算は体重100kgで上限とされる(max 14000mg ➔ 7000mg/回)。

6歳未満の患者

6歳未満の患者の管理は、年長の患者と同じだが、体重に基づいてアセチルシステインの投与量を調整する必要がある。

妊娠中の患者

標準的な評価と管理は妊娠中の患者にも同様だが、経口ルートが禁忌ではないが、静脈内アセチルシステインの使用が推奨される場合がある。

予後

・NACが投与されれば死亡することは稀

・NACが投与されなかった場合は死亡率2〜4%

・肝不全に至った場合の死亡率は20〜40%

おまけ アセトアミノフェン中毒にNACが有効な理由

・アセトアミノフェンの約5%は、CYP450 2E1によってNAPQIという物質に代謝される

・このNAPQIが肝毒性を持っている

・通常であればグルタチオンによってNAPQIは速やかに解毒される

・アセトアミノフェンを大量に摂取するとグルタチオンが枯渇してNAPQIが解毒できず、肝障害が生じる

NACは代謝されグルタチオンに変化し、枯渇したグルタチオンを補充することによって解毒作用を示す

N Engl J Med. 2008; 359: 285-92.

参考文献

JAMA Netw Open. 2023; 6: e2327739.(PMID: 37552484)

N Engl J Med. 2008; 359: 285-92.(PMID: 18635433)

臨床中毒学

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この記事を書いた人

総合内科から救急科に転科して修行中の中堅医師です。勉強した内容を共有していきますのでぜひご参考にしてください!実臨床での利用は自己責任でお願いします。

コメント

コメント一覧 (1件)

  • あまり致命的になることはないみたいですが、治療や検査の内容が少しややこしいので、日々の診療に役立ててもらえると嬉しいです。

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